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笹幸恵
2021.4.6 17:33日々の出来事

世の中、どんどん滑稽になっている。

「まん防」が始まった大阪では、「見回り隊」とやらが
街中の店を歩き回って点検している。
山梨では「やまなしグリーン・ゾーン構想」というのが
あって、独自に感染拡大対策の指標を施設に対して出し、
こちらも見回りを行っている。
どちらも「摘発が目的ではない」というけれど、
抜き打ち検査みたいなことをやっているのだから
戦時中の特高警察を彷彿とさせる。
「安心」とか「安全」とか「信頼」とか、
あるいは「検査するほうもされるほうも
互いに協力し合う」とか、薄っぺらいきれいごとを
並べたって、「営業の自由」の侵害だ。
中には「グリーン・ゾーン認証を受けているのに対策が不十分」と
通報する人もいるという。
これなんか戦時中の「隣組」にそっくりだ。

こうした人たちは、自分が全体主義の監視社会に
手を貸しているなどとは思っていないかもしれない。
しかし確実にそれを推進、強化させている。
「無謀な戦争に突入した当時の日本人は愚かだ」
などと、戦後の日本人に言う資格はないことは、
もうハッキリした。
戦争のほうがまだ話はわかる。
当時は帝国主義で食うか食われるかの世界、
その危機感は今のコロナの比ではない。
ところが今の日本は自縄自縛、自ら進んで
自由を手放したがっている。
テーブル間の距離を1mとか2mとかって
計って、一体何の意味がある???
世の中、どんどん滑稽になってきている。
とりあえず「やっています」感を出して
体裁を整えるのは、軍隊の「員数主義」とそっくり。
有事即応のための官品検査が、いつの間にやら
「検閲のときだけ員数が合っていれば良い」となり、
他の内務班から盗んで帳尻を合わせる。
有事即応という本来の目的は忘れ去られた。

テーブルの距離を測るのは何のため?
飛沫感染を防ぐ?
1mなら良くて、90センチならダメなの?
そこに明確な根拠はあるのか?
そもそも、本当に感染はいけないことなのか?
ならばゼロ・コロナを目指すのか?
そんなことは可能なのか?
あまりに非現実的だ。
一体これらの「感染対策」とやらは
どこにゴールを設定しているのだ?

かつて日本軍は電撃的に進撃し、
マレー半島はじめビルマからラバウルまで
広大な地域を占領した。
ただ、その先の計画はなかった。
さてどうするか?
攻略した最前線基地を守るためにさらに前進し、
ついに攻勢終末点を迎えてしまったのだ。

ゴールはどこか?
それを現実的に考えなければ破綻する。
歴史から学ぶのは、今このときであるはずだ。
笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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